在宅診療で考える生活習慣病予防
順天堂大学医学部 総合診療科学講座
特任教授 横川 博英先生に聞く
生活習慣病予防と在宅医療の未来
生活習慣病の増加が続く現代において、単なる管理ではなく“根本的な予防”をどう実現するかが大きな課題になっている。予防医学、AI技術の活用、在宅医療との連携、そして地域包括ケアの将来像について、横川先生にお話を伺っている。
医師と患者が“ベストパートナー”として取り組む予防の姿勢
生活習慣病の根本予防では、医師と患者が“ベストパートナー”として二輪のように並走する姿勢が最も重要とされている。患者自身が主体的に病状を理解し、行動を選択していくことが求められている。
近年は健康情報が氾濫し、出どころ不明のサプリメントや健康法が広まり、正しい治療がかき消されることもあるため、情報を取捨選択する“ヘルスリテラシー”が重要になっている。医師は一方通行の指導ではなく、患者と一緒に考える診療を心がけている。
AI・スマートウォッチの活用に期待しつつ、課題もある
予防医学分野ではAIやウェアラブル機器の発展が注目を集めている。歩数計のように数値化できるツールは、日々の目標設定に大きく貢献している。AIが加われば、歩数から内臓脂肪の減少量を推計したり、行動が医療費抑制にどの程度つながるかを可視化したりする可能性もあり、患者のインセンティブを高める効果が期待されている。
一方で、高額機器の存在やAIの計算過程がブラックボックスであることなど、課題も指摘されている。技術をどう選び、どう使うかは慎重な見極めが必要とされている。
在宅医療では“簡単で続けられる運動”が効果を生む
在宅診療においては、複雑な運動指導では継続が難しいため、毎日続けられる簡単な運動を習慣化してもらうことを重視している。
転倒骨折予防の研究経験から、足のつまずき防止に重要な前脛骨筋(つま先を上げる筋肉)を鍛える運動を特に推奨している。高齢者は足が上がらずにつまずくことが多く、この筋肉を鍛えることで転倒リスクが下がっている。
さらに、福島県喜多方市で開発された太極拳を取り入れた介護予防体操は、座位でも実施でき、在宅患者にも取り入れやすい運動として注目されている。テレビを見ながらでもできる手軽さがあり、在宅医療における日常活動の拡充に寄与している。
地域包括ケアで求められる総合診療医の新たな役割
地域包括ケアが進む中、医師がケアマネジャーや地域資源と連携する重要性は増している。しかし、同時に医師側の専門性の幅も問われている。在宅医療では整形外科(筋骨格系)や皮膚科(褥瘡など)の知識が必須となり、内科だけでは対応が難しいケースが多く見られている。
そのため総合診療医には、自分の専門領域に加えて、筋骨格系・皮膚疾患・認知症といった幅広い分野の知識を備えることが求められている。こうした幅広い対応力が、生活習慣病予防と在宅医療の連携を強化し、患者のQOL向上に寄与している。



















