利用者に「後悔させない」ために

Care

――地域と人に向き合い続ける、たけのこ介護サービス 川上部長のケアマネジメント論

2007年。
まだ居宅介護支援事業所という言葉も、今ほど一般的ではなかった頃から、地域の介護と向き合い続けてきたのが、たけのこ介護サービスだ。

現在、同社の居宅介護支援事業所には15名のケアマネジャーが在籍し、拠点は7か所にまで広がっている。その中心で現場を見続けてきたのが、川上部長である。

「私が入社したときは本当に小さな事務所でした。6人しかいなかったですね」

そう語る川上部長の言葉からは、事業の拡大だけでなく、介護を取り巻く環境そのものの変化がにじみ出る。

小さな事務所から、地域に根差す拠点へ

創業当初、居宅介護支援事業所は現在の場所ではなく、別の場所に構えられていた。本社は福祉用具を扱う会社で、居宅はあくまで付随する存在だったという。

その後、利用者の増加とともに南砂エリアでデイサービスを開始。
当初は小規模デイサービスと居宅を併設する形だったが、デイサービスの通常規模への拡大を機に、約5〜6年前、現在の本社へと移転した。

「実は去年まで、この事務所は半分しか使っていなかったんです」

昨年には改修工事を行い、壁を取り払って事務所を拡張。ケアマネジャーの人数も15名にまで増えた。

背景にあるのは、単なる規模拡大ではない。“働く人を大切にする”という明確な方針だ。

採用好調の理由は「フレックス」と「在宅勤務」

昨年、たけのこ介護サービスでは、ケアマネジャーの採用が非常に順調だったという。

「正直、なかなか人が来なくて困っていた時期もありました。でも去年は本当に“豊作”でした」

その理由として川上部長が挙げるのが、
給与改定、そして決定的だったというフレックスタイム制と在宅勤務の導入だ。

勤務時間は、月曜から土曜の朝6時から夜10時まで。
月に必要な労働時間(目安は約160時間)を満たしていれば、1日の勤務時間や開始時間は自由。コアタイムも設けていない。

「朝9時に全員が揃うことは、まずないですね。昼から来るスタッフもいますし、通勤ラッシュを避けて10時頃に来るスタッフもいます」

在宅勤務も可能なため、朝6時から自宅で業務を始めるスタッフもいる。
保育園に子どもを送ってから出勤するケアマネジャーもおり、ライフステージに合わせた働き方が実現されている。

「コロナ禍がなければ、正直こんな発想はなかったと思います」

テレワークという言葉が社会に浸透したことが、大きな転機だった。

「社員を大切にする」ことが、理念の中心

たけのこ介護サービスには、三つの企業理念がある。

  1. 地域のニーズに応えたサービスを行う
  2. 親切丁寧且つ正確なサービスを行う
  3. 働きがいのある職場環境を作る

「実は、会長が一番大事にしているのは三つ目なんです」

社員を大切にすることが、結果的に利用者への質の高い支援につながる。
その考え方は、離職率の低さにも表れている。

「今いるケアマネの半分は入社10年前後のベテランです」

フレックスや在宅勤務も、単なる制度ではなく、「人を大切にする」という理念の延長線上にある。

東砂・砂町エリアならではの地域性

たけのこ介護サービスの利用者の多くは、砂町周辺に住んでいる。

「団地にお住まいの利用者さんが圧倒的に多いですね」

経済的に厳しい状況の方、生活保護を利用している方も少なくない。
片付けができず、いわゆる“ゴミ屋敷”状態になってしまうケースもある。

一方で、変化もある。

「ご家族がお若くなってきています。スマホやLINE、メールが当たり前ですね」

かつては電話が主流だった連絡手段も、今ではLINEやメールが中心。
働いている家族にとって、時間を選ばないコミュニケーションは大きな助けになっている。

医療依存度が高い利用者への向き合い方

医療ニーズの高い利用者への支援において、川上部長はこう語る。

「ケアマネは、医療に詳しくなくていいと思っています」

病気のことは医師に聞けばいい。
ケアマネの役割は、利用者の状態を見極め、適切な医療につなぐことだ。

訪問診療医や訪問看護と密に連携し、必要に応じて相談しながら支援体制を整えていく。

しろひげ在宅診療所との連携で感じる“違い”

しろひげ在宅診療所について尋ねると、川上部長は即答する。

「違います。はっきり違います」

社会貢献への強い思い。
講演を通じて伝わる医師の姿勢。
スタッフが感化されるほどの熱量。

「正直、他の訪問診療では、必要以上に訪問したり、緊急時に来てくれないケースもあります。何のための医療なんだろう、と思うこともあります」

その点、しろひげ在宅診療所は一線を画していると感じているという。

「まず受け止める」ケアマネジメント

ケアプラン作成時、利用者や家族の希望が現実的でないこともある。

「正直、それは無理だろうと思うこともあります」

しかし、そこで否定してしまえば、利用者は傷つく。

「どんな希望でも、まずは受け止める。その上で、できるように努力する。やれるだけのことをやってあげて、やはり難しかったときに、別の道を示してあげる」

この姿勢は、川上部長がすべてのケアマネに伝えていることだ。

育成の基本は「1か月の同行」

育成面でも、たけのこ介護サービスは特徴的だ。

未経験者や経験の浅いケアマネは、入社後1か月間、すべてのケアマネに同行する。
その間はプランを持たせない。

「まずは、この仕事ができそうかを自分で判断してもらう」

週1回の会議でのケース検討、外部研修への参加など、学びの機会も継続的に設けられている。

看取り支援で最も大切なこと

終末期や看取りの支援について、川上部長は「スピード」を挙げる。

「今日からヘルパーが必要なら、今日からすぐに手配します」

忙しさを理由に後回しにしてはいけない。
人生の最終局面で、利用者や家族に後悔を残させたくない。

その思いは、川上部長自身の家族の経験にも根差している。

「家に帰っても大丈夫」という入口を作る

地域包括ケアの中で、在宅診療所との連携について問うと、川上部長はこう答えた。

「一番大事なのは、最初の入り口だと思います」

本当に家に帰していいのか――
利用者や家族が抱くその不安に対し、

「大丈夫。私たちがついているから」

そう背中を押してあげること。
在宅という選択肢を提示できることこそが、ケアマネと在宅医療の大切な役割だ。

地域で一番、「後悔させない」支援を

最後に、今後目指す姿を尋ねると、川上部長は迷いなく答えた。

「地域で一番になりたいと思っています」

それは規模や売上だけではなく、
利用者と家族を後悔させない支援を、地域で最も実践できる存在でありたい――。

たけのこ介護サービスの歩みは、これからも地域の暮らしとともに続いていく。

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