医療組織を支える「謙虚さ」という力
昨年11月にスタートした「しろひげコンシェルジュ」。
医師や医療経営者、介護職、在宅医療に関心を持つ方々がつながるプラットフォームとして立ち上がったこの企画は、医療経営や現場課題について対話形式で掘り下げる番組です。院内研修としても活用されており、しろひげファミリーの価値観や組織づくりの考え方を内外へ発信しています。
今回のテーマは、法人として最も大切にしている価値観「謙虚さ」です。
医療という立場の“重さ”
医療現場では、医師や医療職は「先生」と呼ばれます。
その呼称には敬意が込められている一方で、無意識の上下関係を生む力もあります。
医師が発言すれば、それが正しいと受け止められやすい。
反論や異論は飲み込まれる。
本来共有されるべき情報が、遠慮や忖度によって届かない。
こうした構造は、医療安全や組織運営にとって決して健全とは言えません。
理事長の中茂は、しばしばこう語ります。
「医師は存在だけでパワハラになり得る」。
これは決して強い表現ではなく、立場の持つ影響力を自覚せよ、というメッセージです。
だからこそ、医療職には“意識的な謙虚さ”が求められるのです。
謙虚さとは、言葉遣い以上のもの
謙虚さと聞くと、まず思い浮かぶのは丁寧な言葉遣いや礼儀でしょう。
もちろん、それは大前提です。
しかし本質はそこにとどまりません。
- 自分の価値観だけが正しいと思わないこと
- 相手が本音を言えていない可能性を想像すること
- 立場や職種の違いを理解しようとする姿勢を持つこと
医療現場は多職種連携の場です。
医師、看護師、相談員、医療事務、薬剤師、ケアマネジャー。
それぞれが専門性と責任を持ち、それぞれの「正義」を抱えています。
正義と正義は、ときに衝突します。
衝突そのものは悪いことではありません。むしろ健全な議論の証でもあります。
重要なのは、その「ぶつかり方」です。
対立する場面ほど、
言葉を選び、相手の話を最後まで聞き、自分の正しさを一度疑う。
その姿勢がなければ、対話は対立に変わってしまいます。
組織の空気は、日々の言動から生まれる
外部には丁寧でも、内部のスタッフには強く当たってしまう。
それでは本当の意味での謙虚さとは言えません。
組織文化は、管理職の言葉や態度によって形づくられます。
会議での発言、注意の仕方、何気ない一言――。
それらが積み重なり、組織の「空気」になります。
しろひげファミリーでは、管理職会議や朝礼の場でも繰り返し「謙虚さ」について共有しています。
しかし最終的に問われるのは、理念ではなく一人ひとりの実践です。
理事長自身も、「もっと違う伝え方があったのではないか」と振り返ることがあると言います。
感情が先に立ってしまうこともある。
価値観を押し付けてしまったのではないかと反省することもある。
完璧ではないからこそ、意識し続ける。
それが組織の文化を守る力になります。
「気さく」よりも「丁寧」でありたい
理事長が若い頃から意識してきたことがあります。
それは、誰に対しても敬語を使い、「さん」付けで呼ぶこと。
「気さくな先生」ではなく、
「丁寧な先生」でありたい。
フランクさは、ときに無意識の圧力になります。
距離を縮めるのは、信頼関係が築かれてからで十分です。
まずは敬意から始める。
その姿勢が、相手を安心させ、言葉を引き出し、チームを強くします。
謙虚さが、医療の質を高める
謙虚さは、単なる美徳ではありません。
それは、医療の質と組織の安全性を支える基盤です。
言いにくいことが言える環境。
立場に関係なく意見が出せる文化。
違いを受け止められる組織。
これらはすべて、謙虚さから始まります。
自分の正義を持ちながら、
同時に他者の正義を尊重する。
しろひげファミリーが大切にしているのは、その両立です。
医療という強い専門性を持つ世界だからこそ、
私たちは今日も「謙虚さ」を問い続けています。




















