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在宅医療の常識を変える挑戦 ― 「江戸川モデル」を全国へ【後編】

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前編では、しろひげ在宅診療所の成り立ちと、1拠点・全員常勤で患者さんを支える在宅医療の体制について紹介しました。後編では、その医療の質を支える組織づくりと、地域の課題に応える取り組み、そして全国へ広がる「江戸川モデル」の姿に迫ります。
▶ 前編はこちら

※本記事は、DOCTOR’S MAGAZINE 2026年6月号(No.317)「FORTE-日本列島医療機関探訪-」掲載記事をもとに、しろひげコンシェルジュ向けに再編集しています。

‘‘謙虚さ”と‘‘接遇”で医療の質を最大化する

山中氏が組織づくりの核心に置いているのは‘‘謙虚さ”‘‘接遇”だ。人の数だけ価値観やそれに基づく正義がある。だからこそ医療者目線の「こうあるべきだ」という考えは捨てて、常に謙虚な気持ちで患者に向き合う事が大事だと言う。また、接遇は患者との信頼関係の構築に不可欠な要素だ。これらは多職種間でも同様で、チーム医療の質にも直結する。

「患者宅での振る舞いだけでなく、日頃の言葉遣いや態度が、その人の顔をつくる

このことを山中氏は繰り返しスタッフたちに伝えている。その成果は、2023年の「第9回日総研・接遇大賞」受賞という評価にも表れた。ここには多職種間の壁は存在しない。毎朝、1時間かけて行われる朝礼には全職員が参加し情報共有が徹底される。あえて朝礼を短縮し、1人でも多く患者を診るということはしない。

「朝礼は、新規の患者さんの情報共有や夜間帯の引継ぎに加えて、治療や薬剤を学ぶ場としても役立っています。医師のみならず、随行看護師や栄養士、ドライバーも気付いたことを共有し‘‘みんなで診る”組織をつくるための大事な時間となっています。」

その信頼度の高さから、しろひげ在宅診療所には地域の介護職などから毎月50~80人の新規患者が紹介されてくる。意欲の高い優れた医師やスタッフが集まるのも、ポリシーへの深い共感や、挑戦し成長できる魅力的な舞台があるからこそだ。その一例として、数年前、当時募集していなかった管理栄養士が「どうしてもここで働きたい」と自ら応募してきたことがあった。山中氏はその熱意に押され採用、これを機に管理栄養士は4人に拡充、現在は約100人の患者に在宅訪問による栄養指導を行うまでになった。

山中氏を含む創業メンバー8人は1人も欠けることなく在籍しており、離職率も極めて低い。同診療所では部屋を隔てる壁が一切なく、常に皆の動きが見られ、その顔はみんな明るく生き生きとしている。取材中にも周辺で作業するスタッフに声を掛ける山中氏に、みんな楽しそうに答える。‘‘ここで”働きたい”というスタッフが集まっているのだ。

地域の声に応え社会課題にも取り組む

『しろひげさんだったら力になってくれる。』

そうした地域の声に応えるため、山中氏は社会貢献部門の事業やNPO法人を立ち上げ、不登校、引きこもりといった社会孤立者の居場所づくりや、障害を持つ人への就労訓練を通じた社会復帰サポートなど、地域社会の課題にも積極的に取り組む。

大多数が困っている課題には、既に行政や専門機関の支援が介入している。しかし制度の隙間にこぼれ落ちる課題への対応は行政だけでは追い付かない。山中氏はアフリカでの支援活動や市長時代の経験があり、草の根の現場で本当に困っている人の声を聞き、改善に取り組んできた。そうした経験があるからこそ、制度の隙間を埋める支援ができる。

「医療が人の幸せに関われるのは人生のほんの一部。医療に限らず、人が幸せになることなら何でもやる。そんな組織でありたい。」

同診療所が実践する、特定の地域に深く根付き、多職種が密に連携しながら、医療・看護・介護・福祉を一体的に提供する在宅医療や地域支援体制は‘‘江戸川しろひげモデル”と呼ばれている。これまで、しろひげ在宅診療所から医師10人が独立開業をしており各地域でしろひげマインドを広げ、いずれも急成長を遂げている。

「在宅医療は患者さんの幸せを第一に‘‘真面目”に取り組んでいれば、必ず地域から求められ、その地に根付くことができます。病気、障害、社会的孤立———どのような痛みを抱える人にも寄り添える居場所をつくっていきたい。」

在宅医療は、単に自宅で最期を迎えるための医療ではない。患者と家族の幸せを作り出す医療だ。

「苦痛が緩和されるゴールデンタイムをつくり、患者さんがご家族と花見や旅行に出かける。『みんなと一緒に行けて幸せだった』と患者さんが涙する亡くなった後に、写真や動画を見ながら楽しかった思い出を語り合う。身近な人を失うのは悲しい。しかし、ご家族も私たちも、できることを精いっぱい成し遂げた時、そこは確かな幸せが生まれるのです。」

人々の‘‘生きる”に寄り添い、幸せをつくる。それはつくる人の幸せにもつながる。インタビューが終了した15時ごろ、診療所の周りに数人の小学生が自然と集まり始めた。

「普段から1階を開放していて、子どもたちが遊んだり宿題をしに来るんですよ。」と教えてくれた。しろひげ在宅診療所は地域の誰もが心地良さを感じる特別な居場所なのだ。

「今年から児童育成支援拠点事業を始めました。地域の医療・介護・福祉をトータルでみて、どんな人にも寄り添える場所にしていくのが目標です。」

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